2011年02月26日
川俣晶の縁側過去形 本の虫感想編 total 3013 count

テツぼん 2 (ビッグコミックススペシャル), 高橋 遠州, 永松 潔, 小学館

Written By: 川俣 晶連絡先

「久々にギャンブル買いをしたら当たりであった」

「どういう内容?」

「一言で言えば、鉄道オタクが国会議員になったという話だ」

「そんな話が面白いの?」

「国会議員が面白いわけでは無い」

「じゃあ何が面白かったの? 鉄道?」

「それもあるが、そうじゃない。実はこのコミックは珍しく調整型のヒーローなのだ」

「調整型?」

「調整型のヒーローというのは、対立の間に割って入るが、双方の言い分の微妙な食い違いを察知し、双方が納得する代案を出すタイプだ」

「えっ?」

「だから、敵対政党の議員にも自分の属する派閥の偉い議員にも、問題が起きた地元の一般人にも納得のいく解決を与えて終わるわけだ」

「そんなことができるの?」

「普通に考えるとできない。AとBが排他関係なら、同時に成立させることはできない」

「そうだよね」

「でも、実際はAが欲しいのでは無くAを通してA'が欲しいのであり、同じようにBを通してB'が欲しいだけだったりする。で、AとBは排他だが、A'とB'は排他では無いこともある」

「なるほど。その場合は両立があり得るね」

「そして、本来なら政治家とはそれを行うプロであるはずだ、と思うのだよね」

「えっ?」

「政治家の本来の仕事は『調整』だろうと思うのだ」

「天下国家を論じることではない?」

「そんなのは、ヒエラルキーの頂点に立つほんの一握りの政治家がやればいいことだろ。大多数の政治家は、日常的に社会にあまねく存在する対立を上手く解消して物事が前に進むようにすべきなんだろう」

「双方の言い分を聞いて本当の問題点を見抜いて解決すれば双方のメンツを立てつつ問題を解決できるわけだね」

「そうなれば2倍のペースで味方も増える。いいことばかりだ」